O.B.K
前編


 そんなことを言われても困る。飛べと言われて簡単に飛べるものか。足の震えを抑えるのが精一杯なのに。大体、なんなのだこの男は。こいつさえ邪魔しなければ、今頃自分は亡き者になっていたというのに。いきなり現れて余計なことをしておいて、この態度は何様のつもりなのだ。言い種にも腹が立つ。

「あ、でも、出来ることなら落ちる前にパンチ」

 望み通りにしてやろう、と思った。

 軽い左ジャブを顔面に叩き込んでやった。

「ラをぶっ!?」

 小気味よい手応えがあった。不意打ちは完璧なまでに成功し、桂介は不敵な笑みをそのままにのけぞった。

「っとっとっとっ……」

 鉄柵から手を離して数歩後退した桂介は、それからようやく殴られたことに気付いたらしく、しばらく呆然とした後、驚きを隠せない顔でこう言った。

「……いきなり何をするんだ」

 アホかこいつは。


O.B.K
〜あいつはオバケじゃない?〜


あとがき

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O.B.K
後編


「……やれやれ……」

 溜息と共に輝色はそう呟いていた。それは我ながら桂介の真似のように思えて、不意に苦笑がこみあげた。口元を歪めるこの笑い方も、いつの間にか伝染してしまったらしい。それならば、とついでに肩をすくめてみせる。

 なるほど、と輝色は納得した。いつもこうやって自分の相手をしている桂介の気持ちが少し分かったような気がしたのだ。

 これほどハッタリをかましやすい仕草は他にない。

 それはズージィから見ても、大胆不敵を絵に描いたような大庭桂介の姿によく似ていた。オバケでも『退敵師』でもない普通の少女が豪語する。

「どいつもこいつも人をなめきってくれるわねぇ、全く。いいわよ、やれるもんならやってみなさいってのよっ!」

 そして桂介よろしく逃げ出したのだった。
文章熟練度レベル13〜14 『O.B.Kにいただいた感想』

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